対象業種に宿泊業など検討
政府は2日、外国人就労の新たな在留資格「特定技能」の創設を盛り込んだ出入国管理法の改正案を閣議決定し、開会中の臨時国会に提出した。従来の専門的、技術的な分野の人材にとどまらず、一定の要件を満たす人材の就労を可能にし、人手不足を補う即戦力として受け入れを拡大する。対象は人手不足が深刻な業種に限られ、宿泊業など14業種が検討されている。政府は臨時国会で成立させ、来年4月からの制度開始を目指す。
新たな在留資格は「特定技能1号・2号」。特定技能1号の取得要件は、「相当程度の知識または経験を要する技能」や一定の日本語能力。在留期間は最長5年で家族の帯同は認めない。雇用形態は原則として直接雇用で、報酬額は日本人と同等の水準とする。
特定技能1号での在留中に指定の試験などに合格し、「熟練した技能」が認められると、特定技能2号に移行でき、現行の専門的・技術的分野と同様の在留資格が得られ、長期の滞在が可能になる。
対象業種は、生産性向上や国内人材確保への努力にもかかわらず、産業の持続、発展に外国人材の受け入れが必要と国が認めた業種。当初から検討対象に挙がっていた宿泊、介護、農業、建設、造船をはじめ、外食、ビルクリーニングなど14業種が想定されている。具体的な受け入れ業種は法務省令で定める。
外国人労働者の受け入れでは、入国・在留審査で適切な就労活動を行うための措置がとられていることを確認するほか、企業や自治体などと連携して日常生活の支援態勢などを整備する。悪質な仲介業者を排除する施策も講じる。
出入国管理法の改正案の具体的な制度運用などを巡っては、国会での審議が注目されている。
菅義偉官房長官は2日の記者会見で「少子高齢化、人口減少が進み、中小企業をはじめ人手不足が進行する中にあって、外国人材を受け入れるための新たな在留資格の創設は喫緊の課題。関係省庁がしっかりと法案の趣旨を説明し、審議の上、今国会での成立をお願いしたい」と述べた。
石井啓一国土交通相は2日の会見で、「国土交通省としては、建設業、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業における新たな在留資格による外国人材の受け入れについて、関係業界の意向も踏まえつつ、法務省をはじめとした関係省庁と連携して検討を進めている。法案に関する国会での審議を注視しながら、個別分野の所管省庁として、しっかりと準備を進めたい」と述べた。
宿泊業界では、法改正による外国人材の確保に期待を寄せている。日本旅館協会、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会、日本ホテル協会、全日本シティホテル連盟の4団体が9月に「一般社団法人宿泊業技能試験センター」を共同で設立し、新たな在留資格の活用に必要となる技能試験の実施態勢の準備を進めている。
また、出入国管理法の改正案には、法務省設置法の改正案がセットになっている。外国人の出入国、在留などの管理態勢を強化するため、法務省の外局として「出入国在留管理庁」の設置が盛り込まれている。